「売上はまあまあなんだけど、思ったより利益が残らないんだよなぁ…」
「ウチの職人たち、もうちょっとモノを大事に使ってくれればいいんだが…」
日々の現場管理や資金繰りに頭を悩ませている建設業の社長さん、本当にお疲れ様です。売上を伸ばすことももちろん大事ですが、会社の利益を確実に増やしていくためには、「コスト削減」という視点も欠かせません。
「コスト削減なんて、ケチケチするみたいで嫌だな」
「そんな細かいこと、言っても現場はなかなか変わらないよ…」
そう感じる社長さんもいらっしゃるかもしれませんね。でも、ここで言うコスト削減は、単なる「節約」とは少し違います。現場に潜む「もったいない」を見つけ出し、それをなくしていくことで、無理なく利益をじわじわと増やしていくための、建設業ならではの知恵と工夫の話です。
この記事では、難しい経営分析ではなく、社長や現場の職人さんが「あ、それならできそうだな」と思えるような、現場でできる地道なコスト削減の具体例をたくさんご紹介します。「チリも積もれば山となる」。その小さな工夫が、会社の体力を強くする大きな一歩になるかもしれません。
なぜ今、「コスト削減」が会社の利益を守るのか?
会社の利益は、すごくシンプルに言うと「利益 = 売上 ー コスト」ですよね。
もちろん、売上を増やす努力は大切です。新しい仕事を取ってきたり、単価を上げたり…。でも、今の時代、競争も激しいですし、急に売上を大きく伸ばすのは簡単ではありません。
一方で、「コスト」はどうでしょうか?
材料の仕入れ方、道具の使い方、現場での時間の使い方…。実は、日々の業務の中に、見直せる「ムダ」や「もったいない」がたくさん隠れていることが多いんです。
そして、コスト削減のすごいところは、削減できた分が、ほぼそのまま会社の利益になるということ。例えば、年間10万円のコストを削減できれば、それは10万円の利益が増えたことと同じインパクトがあるんです。
「1円を笑う者は1円に泣く」なんて言葉もありますが、現場で生まれる小さな「もったいない」の積み重ねが、気づけば大きな金額になっていることも…。会社の足腰を強くするためにも、コスト意識を高めていくことは、今とても重要になっています。
あなたの現場にもきっとある!「もったいない」発見アイデア集
「ウチの現場で、具体的にどんなことができるんだろう?」
ここでは、明日からでも意識できるコスト削減のアイデアを、「材料」「道具・工具」「燃料費・車両費」「時間・手間」の4つの切り口でご紹介します。
【材料編】~まだ使える!買いすぎ注意!~
- 端材だって立派な資源!「もったいないBOX」を作ろう:
「これくらい、もう使えないか…」と捨ててしまう前に、ちょっと待った! 短い木材、半端なボード、余った塗料など、他の現場で活かせることもあります。「端材置き場」や「もったいないBOX」を決めて保管するルールを作るだけでも、廃棄コストの削減と材料費の節約につながります。 - 「念のため多めに」が命取り? 発注量の見直しを:
材料が足りないと困るから、つい多めに発注しがちですよね。でも、それが過剰在庫や現場での無駄遣いにつながることも。図面をよく見て必要な量をしっかり計算する、過去のデータから適正量を判断するなど、「ジャストサイズ」の発注を心がけましょう。 - 品質を守りつつ、賢く代替品を探す:
いつも使っている材料がベストとは限りません。同じような品質や性能で、もっと安価な材料がないか、常にアンテナを張っておきましょう。仕入先さんに相談してみるのも良い方法です。(ただし、安かろう悪かろうにならないよう、品質の確認は慎重に!)
【道具・工具編】~大事に使えば、長持ち&効率UP!~
- 「あれどこいった?」は時間のムダ! 整理整頓&定位置管理:
道具を探す時間、実はかなりのロス。「使ったら元の場所に戻す」という基本的なルールを徹底するだけで、紛失を防ぎ、作業効率も上がります。道具箱の中を整理したり、棚に工具の名前を書いたりするだけでも効果あり! - ひと手間で寿命が変わる! 定期的なメンテナンス:
電動工具の掃除や注油、刃物の手入れなど、ちょっとしたメンテナンスで道具は驚くほど長持ちします。「壊れたら買い替える」のではなく、「大事に使って長く使う」意識を持つことが、買い替えコストの削減につながります。 - 「誰が持ってる?」を防ぐ! 共有ルールの明確化:
会社で共有している道具や機械。「今、誰が使ってるんだっけ?」とならないように、簡単な管理簿を作ったり、使用ルールを決めたりするだけでも、重複購入や無駄な探し物の時間を減らせます。
【燃料費・車両費編】~毎日の小さな積み重ねが大きな差に!~
- エンジンかけっぱなし、もったいない! アイドリングストップの徹底:
ちょっとした荷物の積み下ろしや休憩中など、こまめにエンジンを切りましょう。特に燃料費が高騰している今は、効果絶大です。 - 今日のルート、最短ですか? 効率的な移動計画を:
複数の現場を回る時、どの順番で行くのが一番効率的か? 出発前に地図アプリなどで確認するだけでも、無駄な走行距離や時間を減らせます。可能であれば、相乗りや乗り合いも積極的に行いましょう。 - 燃費にも影響! 車両の定期点検&タイヤ空気圧チェック:
車のメンテナンスを怠ると、燃費が悪くなることがあります。定期的なオイル交換やタイヤの空気圧チェックなど、基本的なメンテナンスをしっかり行うことも、間接的なコスト削減につながります。
【時間・手間編】~時は金なり!現場のムダをなくす~
- 段取り八分、仕事二分! 手待ち時間をなくす工夫を:
「次の材料がまだ来ない」「〇〇さんの指示待ち」…現場での手待ち時間は、人件費の大きなロス。前日のうちに翌日の段取りをしっかり確認する、必要な指示は早めに出すなど、職人さんがスムーズに動ける環境を作ることを意識しましょう。 - あっち行ったり、こっち行ったり… 不要な移動を減らす:
現場内での道具や材料の置き場所を工夫するだけで、無駄な移動を減らすことができます。作業動線を意識したレイアウトを心がけましょう。 - 「あれ、どうやるんだっけ?」をなくす! 簡単なマニュアル化:
いつも同じような作業でミスが起きたり、人によってやり方が違ったりすることはありませんか? 簡単な手順書やチェックリストを作るだけで、ミスの削減(=手戻りコストの削減)や作業の標準化につながります。
効果を「見える化」して、モチベーションUP!
コスト削減は地道な取り組みだけに、効果が見えないと長続きしません。難しく考える必要はありませんが、少しだけ「見える化」を意識してみましょう。
- 今月の目標設定: 「今月は、端材の分別を徹底してみよう!」「アイドリングストップを意識しよう!」など、簡単な目標を立てて、朝礼などで共有する。
- 小さな成功体験の共有: 「〇〇さんが、古い工具を修理して使えるようにしてくれたぞ!」「今週はゴミの量が少し減ったみたいだ!」など、ポジティブな変化をみんなで共有する場を作る。
- ざっくり試算でイメージ: 「もし、毎日の燃料費を一人あたり100円節約できたら、年間で〇〇円になるぞ!」といった簡単な試算を示して、コスト削減のインパクトを具体的にイメージしてもらう。
「やらされ感」なく、みんなで取り組むには?
コスト削減は、社長だけが頑張ってもうまくいきません。現場の職人さんたちの協力があってこそ、効果が出ます。そのためには、「やらされ感」ではなく、みんなで「会社を良くしていこう」という雰囲気を作ることが大切です。
- まずは社長から!: 社長自身が、率先して「もったいない」を意識し、道具を大切に扱う姿を見せる。
- 現場の声を聞く: 「もっとこうしたら、ムダがなくなるんじゃないか?」という職人さんからのアイデアを積極的に聞き、良い提案はどんどん採用する。
- 小さな「ありがとう」を形に: コスト削減に貢献してくれた職人さんに感謝の言葉を伝えるのはもちろん、例えば「削減できた予算で新しい工具を買う」「たまには美味しいものでも食べに行く」など、ささやかな形でも還元する仕組みがあると、モチベーションにつながります。
まとめ:地道な一歩が、会社の未来を作る
現場の「もったいない」を見つけ出し、改善していくコスト削減。それは、決してケチケチすることではなく、会社の資源を大切にし、利益をしっかりと確保するための、賢い経営戦略です。
今日ご紹介したアイデアの中に、一つでも「これならできそうだな」と思えるものがあれば、ぜひ明日から試してみてください。完璧を目指す必要はありません。小さなことからコツコツと。その地道な一歩一歩が、会社の体力をじわじわと強くし、厳しい時代を乗り越えるための確かな力になるはずです。
「もったいない」をなくす知恵は、もともと日本の職人さんが大切にしてきた心でもあります。みんなで知恵を出し合い、より良い現場、より強い会社を一緒に作っていきましょう。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況に対するアドバイスではありません。具体的なコスト削減策の導入にあたっては、専門家にご相談いただくか、ご自身の判断でお願いいたします。