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ダンドリ八分!職人が最大限の力を発揮できる現場の作り方


「あれ、まだ材料届かないの?」
「次、何やればいいんスか? 指示待ちなんですけど…」
「えっ、聞いてた手順と違うじゃん! やり直し!?」

活気があるはずの建設現場で、こんな風に職人さんの手が止まってしまったり、イライラした空気が流れたりすること、ありませんか? 腕のいい職人さんを集めても、なぜか作業がスムーズに進まない…。その原因は、もしかしたら「段取り(ダンドリ)」にあるのかもしれません。

昔から「段取り八分、仕事二分」と言われるように、建設業において事前の準備や計画がいかに重要かは、社長さんが一番よくご存知のはず。でも、日々の忙しさの中で、つい現場任せになったり、行き当たりばったりになったりしていませんか?

この記事では、職人さんたちが持てる力を最大限に発揮し、気持ちよく、そして効率的に働ける現場を作るための「段取り術」について、具体的なコツを分かりやすくご紹介します。良い段取りは、現場の生産性を上げるだけでなく、職人さんのモチベーションや会社の利益にも繋がる、まさに現場力の”エンジン”です。

なぜ今こそ「段取り」が現場の命運を分けるのか?

「段取りなんて、現場の職長がやればいいんじゃないの?」
そう思う社長さんもいるかもしれません。もちろん現場リーダーの役割は重要ですが、会社全体の生産性を上げ、厳しい競争を勝ち抜いていくためには、社長自身が段取りの重要性を深く理解し、その環境を整えることが不可欠です。

良い段取りがもたらすメリットは計り知れません。

  • 生産性の向上: 手待ち時間や手戻りが減り、作業がスムーズに進むことで、限られた時間でより多くの仕事がこなせるようになります。
  • コスト削減: 無駄な人件費(手待ち時間)や、材料のロス、工期の遅延による追加コストなどを削減できます。
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  • 品質の向上: 焦りや混乱の中で作業すると、ミスや見落としが起こりがちです。落ち着いて作業できる環境が、丁寧な仕事、つまり品質向上に繋がります。
  • 職人のモチベーション維持: 誰だって、段取りが悪くてスムーズに仕事ができない現場はストレスが溜まります。気持ちよく仕事に集中できる環境は、職人さんのやる気を引き出し、定着率にも良い影響を与えます。
    関連記事: [(仮)なぜ、あの会社の若手はイキイキしてる?職人が辞めずに定着する職場の秘密]
  • 安全確保: 焦りや不注意は事故の元。余裕を持った段取りは、安全確認の時間を確保し、事故のリスクを低減します。
    関連記事: [「危なかった!」をゼロに近づける。建設現場の事故防止、社長が今すぐやるべき事]

逆に、段取りが悪いと、これらのメリットが全て裏目に出てしまう可能性があるのです。

「またか…」段取り不足が引き起こす現場の”あるある”問題

「ウチの現場、もしかして…?」
段取り不足の現場では、こんな問題が起こりがちです。思い当たることはありませんか?

  • 材料・道具待ち: 必要な材料や道具が時間通りに届かない、あるいは手配されておらず、職人さんの手が止まる。
  • 指示待ち・確認待ち: 次の作業指示が曖昧だったり、遅れたりして、職人さんが何をすれば良いか分からず待機してしまう。
  • 情報の行き違い・伝達ミス: 「言った・言わない」「聞いていない」が発生し、作業の手順を間違えたり、認識のズレが生じたりする。
  • 手戻り・やり直し: 段取り不足によるミスや勘違いで、せっかく進めた作業をやり直す羽目に。時間もコストも余計にかかる。
  • 職人間のイライラ・衝突: スムーズに進まない状況に、職人さん同士がイライラし、険悪なムードになったり、責任のなすりつけ合いが始まったりする。

こんな状況が続けば、現場の士気は下がり、生産性も品質も低下するのは目に見えていますよね。

デキる社長・現場リーダーの「段取り力」を高める3つの要素

では、どうすれば段取り力を高め、職人さんが最大限の力を発揮できる現場を作れるのでしょうか? 大切なのは、「計画・準備」「指示・情報共有」「コミュニケーション」の3つの要素です。

①【計画・準備】~転ばぬ先の杖を入念に~

  • 図面・仕様書を読み込む: まずは、これから作るものを正確に理解すること。疑問点や不明点は、事前に元請けや設計者に確認しておきましょう。曖昧なまま進めないことが重要です。
  • 必要なものをリストアップ&確実手配: どんな材料が、いつまでに、どれだけ必要か? どんな道具や機械が必要か? リスト化し、納期を確認した上で、早め早めに手配します。特に特殊な材料やレンタル品は要注意。
  • 適材適所の人員配置: 誰にどの作業を任せるか? 職人さんのスキルや経験を考慮して、最適な人員配置を考えます。応援が必要なら、早めに手配しましょう。
  • 現実的な工程表を作る(そして共有する): 無理のない、現実的なスケジュールを立てます。そして、それを職人さん全員と共有し、「いつまでに、何を、どのレベルまで終わらせるか」の共通認識を持つことが大切です。

②【指示・情報共有】~曖昧さをなくし、スムーズな流れを作る~

  • 朝礼・ミーティングを有効活用: ただの挨拶で終わらせず、「今日の作業目標」「各自の役割分担」「注意すべき危険箇所」「前日からの変更点」などを明確に伝達する場にしましょう。短時間でも毎日行うことが重要です。
  • 指示は「具体的」に: 「あれ、やっといて」「いい感じにしといて」では伝わりません。「〇〇の場所に、△△の材料を使って、□□の寸法で、午後3時までに仕上げてください」のように、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を意識して、具体的に指示を出しましょう。
  • 「見える化」で認識を合わせる: 口頭だけでなく、簡単な図やメモを描いて見せたり、ホワイトボードに工程や注意点を書き出したりするなど、「目で見て分かる」工夫を取り入れると、認識のズレを防げます。
  • 進捗を把握し、臨機応変に: 計画通りに進んでいるか、常に現場の状況を把握しましょう。遅れが出ている場合や問題が発生した場合は、早めに原因を特定し、計画を修正するなど、臨機応変に対応することが求められます。

③【コミュニケーション】~風通しの良い現場は、段取りもスムーズ~

  • 職人さんの声を聞く: 「社長(職長)、ここの納まり、こうした方が良くないですか?」「この手順だと、ちょっとやりにくいんですが…」といった現場からの意見や提案は、段取り改善の宝庫です。頭ごなしに否定せず、まずは耳を傾ける姿勢を示しましょう。
  • 職人さん同士の連携を促す: 「〇〇さん、手が空いたら△△さんの応援お願いできる?」「ここの部分、隣の工程と関わるから、□□さんとよく打ち合わせといてね」など、リーダーが積極的に声かけをして、職人さん同士のコミュニケーションを促しましょう。
  • 問題はすぐに共有・解決: 小さな問題でも、隠さずにすぐに報告・相談できる雰囲気を作ることが大切です。早期に情報を共有できれば、大きなトラブルになる前に対処できます。

段取り力向上は社長の仕事! 会社全体で取り組もう

現場の段取り力を高めるには、社長自身の意識と行動がカギを握ります。

  • 段取りの重要性を伝え続ける: なぜ段取りが大切なのか、それが職人さん自身の働きやすさや会社の利益にどう繋がるのかを、繰り返し伝えましょう。
  • 段取り上手を評価する: 作業が速い職人さんだけでなく、常に先を読んで準備をし、周りと連携してスムーズに仕事を進められる職人さんを、きちんと評価する姿勢を示しましょう。
  • 環境整備をサポートする: より効率的な段取りのために、情報共有ツール(例:施工管理アプリなど、難しくないものから)の導入を検討したり、必要な研修の機会を提供したりすることも有効です。
    関連記事: [(仮)中小建設業も無縁じゃない!「未来の現場」お役立ち技術トレンド【超入門】]
  • 社長自らが手本となる: 社長自身の仕事の進め方が、段取り良く、計画的であれば、それが一番のメッセージになります。

まとめ:良い段取りが、職人と会社の未来を明るくする

「段取り八分、仕事二分」。この言葉の重みを、改めて感じていただけたでしょうか?

良い段取りは、単に作業を効率化するだけでなく、現場の安全を守り、品質を高め、そして何より、職人さんたちがストレスなく、気持ちよく、自分の能力を最大限に発揮できる環境を作り出します。そんな現場が増えれば、会社の評判は上がり、利益も自然と向上していくはずです。

完璧な段取りを目指す必要はありません。まずは、今日ご紹介したヒントの中から、「これならできそう」と思うことを一つでも取り入れてみてください。その小さな一歩が、現場の「ダンドリ力」を高め、職人と会社の明るい未来へと繋がっていくはずです。


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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況に対するアドバイスではありません。具体的な現場管理や工程管理の方法については、ご自身の判断でお願いいたします。

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