「ウチの現場、どうもゴチャゴチャしてるんだよなぁ…」
「道具を探す時間、材料の置き場…もっと効率よく仕事を進められないもんか…」
「『片付けろ!』って言っても、なかなか職人たちに浸透しないんだよ…」
毎日、現場の安全や品質、工程管理に気を配る建設業の社長さん。現場の「整理整頓」の重要性は痛いほど分かっていても、なかなか徹底できずに悩んでいませんか? 本当にお疲れ様です。
でも、もし「単なるお片付け」だと思っていた整理整頓が、実は会社の利益に直結する重要な経営改善活動だとしたら、どうでしょう?
この記事では、製造業などでよく聞かれる「5S(ゴエス)」という考え方を建設業の現場に当てはめ、なぜ片付いている現場が儲かるのか? その理由と、今日からできる簡単な実践ステップを分かりやすく解説します。「ウチの現場でもできるかも!」と思えるヒントが、きっと見つかるはずです。
なぜ建設現場は「散らかりやすい」のか? 仕方ない…と諦める前に
まず、建設現場が整理整頓を維持しにくい理由を考えてみましょう。これを知っておくだけでも、「仕方ない」と諦めるのではなく、「だからこそ工夫が必要だ」という発想に繋がります。
- 状況が刻々と変化する: 工事が進むにつれて、作業場所も、必要な材料も、現場の状況もどんどん変わっていきます。
- 多様な人が出入りする: 自社の職人だけでなく、様々な専門業者さんが出入りするため、ルールが徹底しにくい側面があります。
- 屋外や仮設の環境が多い: 天候の影響を受けやすく、しっかりした保管場所や整理棚を設置しにくい場合もあります。
- 扱うモノが多くて大きい: 大量の資材、多種多様な道具や機械など、管理すべきモノの種類も量も多いですよね。
こういった建設現場特有の事情があるからこそ、「意識的な取り組み」としての整理整頓、つまり「5S」が効果を発揮するのです。
今さら聞けない?「5S」って、そもそも何だっけ?
「5S」とは、整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)の頭文字をとったもので、職場環境を整え、維持するための活動です。建設業の現場に当てはめて、超簡単に説明すると…
(ここに、5Sの各要素をアイコンや簡単なイラストで示すイメージ)
- 整理 (Seiri):【要るモノと要らないモノを分ける!】
- 現場や倉庫、車の中にあるモノを「今すぐ使うモノ」「いつか使うモノ」「もう使わないモノ」に分け、不要なモノは思い切って捨てる・処分すること。
- 整頓 (Seiton):【要るモノを使いやすく置く!】
- 必要なモノを、誰でも「すぐに」「分かりやすく」「取り出せる」ように、置き場所(定位置)を決めて表示し、きちんと置くこと。「探すムダ」をなくします。
- 清掃 (Seiso):【とにかくキレイにする!】
- 現場や作業場、道具などをピカピカに掃除すること。単にキレイにするだけでなく、掃除しながら機械の不具合や異常に気づくきっかけにもなります。
- 清潔 (Seiketsu):【キレイな状態をキープする!】
- 整理・整頓・清掃された状態を維持し、それが当たり前になるように仕組みを作ること。
- 躾 (Shitsuke):【決めたルールを守る習慣をつける!】
- 決められたルールや手順を、全員が守れるように習慣づけること。これが一番難しく、でも一番重要かもしれません。
難しく考えず、「いらない物を捨てて(整理)、使いやすく置いて(整頓)、キレイにして(清掃)、それを保ち(清潔)、みんなで守る(躾)」と覚えればOKです!
「片付いている現場 = 儲かる現場」これ、ホントです!
「で、それがどうして儲かることに繋がるの?」
ここが一番知りたいポイントですよね。5Sが徹底された現場は、様々な面でメリットを生み出し、それが結果的に会社の利益に繋がっていくのです。
- 【効率UP!】→ 時間というコストを大幅削減!
- 探し物ゼロ: 「あれどこだっけ?」という時間がなくなります。職人さん一人が1日に5分探し物をしたら、10人いれば50分。年間で考えたら…?
- スムーズな動線: モノが整理され通路が確保されていると、移動や運搬がスムーズになり、作業効率が格段に上がります。
- 手待ち時間の削減: 必要なモノがすぐ手元にあれば、段取りもスムーズになり、無駄な待ち時間が減ります。
→ 関連記事: [ダンドリ八分!職人が最大限の力を発揮できる現場の作り方]
- 【安全UP!】→ 事故防止で、損失リスク回避!
- 転倒・つまずき防止: 床にモノが散乱していなければ、転倒やつまずきによるケガのリスクが減ります。
- 危険箇所の明確化: 整理整頓されていると、危険な箇所や注意すべき点が分かりやすくなります。
- ヒューマンエラーの減少: スッキリした環境は、集中力を高め、うっかりミスを防ぐ効果も期待できます。
→ 関連記事: [「危なかった!」をゼロに近づける。建設現場の事故防止、社長が今すぐやるべき事]
- 【品質UP!】→ ミス防止で、手戻りコスト削減!
- 材料・道具の間違い防止: 似たような材料やサイズの違う道具を間違える、といったミスを防げます。
- 丁寧な作業環境: きれいな環境は、職人さんの「良い仕事をしよう」という意識を高め、丁寧な作業につながります。
- 製品保護: 材料や半製品が乱雑に置かれて傷ついたり汚れたりするのを防ぎます。
- 【モラルUP!】→ チーム力向上&会社の評判UP!
- 気持ちよく働ける: キレイで整然とした職場は、単純に気持ちがいいもの。職人さんのストレス軽減やモチベーション向上に繋がります。
- 会社への信頼感: 「この会社は、働く環境もきちんとしている」と感じてもらえれば、職人さんの定着率向上にも繋がります。
- お客様からの好印象: きれいな現場は、施主さんや元請けさん、近隣住民の方からの印象も格段に良くなります。「あの会社は仕事が丁寧だ」という評判は、次の仕事に繋がる大切な資産です。
→ 関連記事: [「次も、あの会社で!」と指名される現場の“空気感”はどう作る?]
このように、5Sは「ムダ」「ムラ」「ムリ」をなくし、「効率」「安全」「品質」「モラル」を高めることで、直接的・間接的に会社の利益に貢献してくれるのです。
完璧じゃなくてOK!建設業版「5S」かんたん実践ステップ
「よし、ウチでもやってみよう!」と思ったら、まずは完璧を目指さず、スモールスタートで始めるのが成功のコツです。
- ステップ1:まずは「整理」!「不要物一掃デー」を決行!
- 対象エリアを絞りましょう。(例:倉庫の一角、特定の車の中、仮設事務所など)
- 「赤札作戦」などで、要らないモノに印をつけていき、期日を決めて一気に処分!
- ステップ2:次に「整トン」!モノの「住所」と「表札」を決める!
- 道具や資材の置き場所(定位置)を決めます。
- 棚や床に、何がどこにあるか分かるようにテープで枠線を描いたり、名前を書いたラベル(表札)を貼ったりしましょう。写真を使うのも効果的!
- 使用頻度に合わせて置き場所を工夫。「よく使うモノは手前に、取り出しやすく」が基本です。
- ステップ3:毎日ちょこっと「清掃」タイム!
- 一日の作業終わりに「5分間だけ」など、時間を決めて簡単な清掃を習慣化。自分の持ち場周りの掃き掃除、使った道具を拭く、ゴミをまとめる、など簡単なことでOKです。
- ステップ4:「清潔」キープ!変化を「見える化」!
- 定期的に現場をチェックし、きれいな状態が維持できているか確認しましょう。
- 「Before→After」の写真を撮って掲示するなど、改善の成果を「見える化」すると、モチベーション維持に繋がります。
- ステップ5:「躾」は焦らず根気よく!ルールと雰囲気づくり!
- 守ってほしいルールは、具体的に、そしてシンプルに。(例:「使った道具は必ず元の場所に戻す」「通路にはモノを置かない」)
- 朝礼などでルールを繰り返し確認し、守れている人を見つけたら「〇〇さん、いつもキレイに使ってくれてありがとう!」と具体的に褒めましょう。
- そして何より、社長やリーダーが率先してルールを守る姿を見せることが一番効果的です。
5Sを根付かせるために、社長ができること
5S活動が現場に定着するかどうかは、社長の関わり方にかかっています。
- 「なぜ5Sをやるのか?」目的を熱く語る: 単なる命令ではなく、5Sが会社の成長やみんなの働きやすさにどう繋がるのか、社長自身の言葉で伝えましょう。
- 率先垂範!社長が一番の5Sリーダーに: 社長自らが整理整頓や清掃に取り組む姿を見せれば、従業員の意識も変わります。
- 必要な資源(時間・場所・道具)をケチらない: 「忙しいから後で」ではなく、5Sのための時間を確保したり、整理棚や清掃道具などをきちんと用意したりすることも大切です。
- 成果を認め、褒める文化を作る: 頑張りをきちんと評価し、ポジティブなフィードバックを行うことで、継続的な取り組みを促します。
まとめ:きれいな現場は、会社の未来を明るくする「投資」
「たかが片付け、されど片付け」。5Sは、目先の作業時間を少し使うかもしれませんが、長い目で見れば、会社の生産性、安全性、品質、そして利益を向上させる、非常に効果的な「投資」です。
完璧を目指す必要はありません。まずは小さなエリアから、簡単なルールから、スモールスタートで始めてみませんか? キレイで、安全で、効率的な現場は、働く人にとっても、お客さんにとっても、そして社長自身にとっても、気持ちの良いものです。
職人さんと一緒に、誇れる現場、そして儲かる会社を、5S活動を通じて作っていきましょう!
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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況に対するアドバイスではありません。具体的な5S活動の導入にあたっては、ご自身の判断でお願いいたします。