「今月はなんとか乗り切れたけど、来月、再来月の支払いは大丈夫かな…」
「大きな現場の入金がズレたら、一気に厳しくなるなぁ…」
建設業の社長さん、毎月の資金繰り、本当に気が抜けませんよね。頭の中ではなんとなく「入ってくるお金」と「出ていくお金」を計算しているつもりでも、いざ月末が近づくとヒヤッとすることも…。お察しいたします。
もしかして、税理士さんに作ってもらった立派な資金繰り表が、机の引き出しやパソコンのフォルダの中で眠っていませんか? 「見方がよく分からない」「作るのが面倒くさい」と感じて、結局どんぶり勘定に戻ってしまっている社長さんも、少なくないかもしれません。
でも、ちょっと待ってください! 資金繰り表は、難しい会計知識がなくても、もっとシンプルに、もっと気軽に活用できる、会社の未来を守るための強力なツールなんです。
この記事では、「数字は苦手…」という社長さんでも大丈夫! 手書きでも作れる超シンプルな資金繰り把握シートとその使い方をご紹介します。これを使えば、会社の「未来のお金」の流れがグッと見えやすくなり、漠然とした不安を具体的な対策に変えることができますよ。
なぜ「未来のお金」を見える化する必要があるの?
「なんとなく分かっていれば、それでいいんじゃないの?」
そう思うかもしれません。でも、会社の「未来のお金」の流れ、つまりキャッシュフローを事前に把握しておくことには、大きなメリットがあります。
- 「いつ」「いくら」足りなくなりそうか、事前に察知できる!
これが最大のメリットです。資金ショート(お金が足りなくなること)は、会社にとって一番避けたい事態。事前に分かっていれば、慌てずに対策を打つ時間が生まれます。 - 漠然とした不安が減り、精神的にラクになる!
「来月大丈夫かな…」というモヤモヤした不安は、社長にとって大きなストレスです。数字で見える化することで、「いつまでに、いくら準備すればいい」と具体的な目標が見え、精神的な負担が軽くなります。 - 余裕を持った資金計画が立てられる!
「来月は少し余裕がありそうだから、この支払いを済ませておこう」「3ヶ月後に大きな支払いがあるから、今から少しずつ準備しておこう」など、計画的なお金の使い方ができるようになります。 - 銀行交渉などでも役立つ!
将来の資金繰りの見通しを説明できる資料があれば、銀行からの信頼も得やすくなります。
つまり、資金繰り表は、会社の未来を予測し、先手を打つための「未来予想図」であり「航海図」のようなものなのです。
難しくない!手書きOK!「超シンプル資金繰り把握シート」
「でも、やっぱり作るのが面倒くさそう…」
ご安心ください! ここでご紹介するのは、複雑な計算式も、パソコンも不要(もちろん使ってもOK!)、ノートやコピー用紙にサッと書けるレベルの超シンプルなシートです。
(ここに、手書き風のシンプルな資金繰り把握シートのテンプレート例を図で示すイメージ)
項目 | 先月末残高 | 今月(〇月) | 来月(△月) | 再来月(□月) |
---|---|---|---|---|
入ってくるお金(入金) | ||||
売上入金(A工事) | 100 | |||
売上入金(B現場) | 150 | |||
売上入金(C社) | 200 | |||
その他入金 | 10 | |||
①入金合計 | 110 | 150 | 200 | |
出ていくお金(支払) | ||||
材料費(D社) | 30 | |||
外注費(E興業) | 40 | 50 | 60 | |
給料・社保 | 20 | 20 | 20 | |
家賃 | 10 | 10 | 10 | |
リース・ローン | 5 | 5 | 5 | |
借入返済 | 15 | 15 | 15 | |
その他経費 | 5 | 5 | 5 | |
②支払合計 | 125 | 105 | 115 | |
③差し引き(①-②) | -15 | +45 | +85 | |
④繰越残高(前月残高+③) | 50 | 35 | 80 | 165 |
(※上記はあくまで一例です。項目はご自身の会社に合わせて調整してください)
どうですか? これなら、なんとなくイメージが湧きませんか? 大事なのは、「いつ、いくら入ってきて、いつ、いくら出ていくのか」を書き出すことです。
超簡単!3ステップで「未来のお金」を見える化しよう
このシンプルなシート、書き方もとっても簡単です。
- ステップ1:【未来の入金予定】を書き出す
まずは、今後入金される予定の売上を書き出しましょう。請求書を出しているものはもちろん、これから請求する予定のものも、確度が高いものから書き込みます。「〇月〇日入金予定」など、日付もメモしておくと、より具体的になります。 - ステップ2:【未来の支払予定】を書き出す
次に、今後支払う予定のお金を書き出します。毎月決まっている家賃や給料、ローン返済などは簡単ですね。材料費や外注費など、金額が変動するものは、請求書や発注書を確認したり、概算で予測したりして記入します。支払期日も忘れずに。 - ステップ3:【差し引きと繰越残高】を計算する
各月の「入金合計」と「支払合計」を計算し、その月の「差し引き(収支)」を出します。そして、前月末の実際の通帳残高(あるいは手元現金との合計)に、その月の差し引き額を足し引きして、「繰越残高」を計算します。これが、その月末に手元に残る(はずの)お金の見込み額です。これを翌月、翌々月…と繰り返していきます。
ポイントは、完璧を目指さないこと!
最初はザックリでOKです。「だいたいこれくらいかな?」という金額でも構いません。まずは書き出してみて、「未来のお金の流れ」を大まかに掴むことが重要です。慣れてきたら、少しずつ精度を上げていけば良いのです。
「あれ?来月マイナスだ…」未来の資金不足が見えたらどうする?
このシートを作ってみて、「うわっ、来月の繰越残高がマイナスになりそうだ…!」と気づくことがあるかもしれません。
でも、落ち込む必要はありません!むしろ、早く気づけてラッキーです。なぜなら、今から対策を打つ時間があるからです。
資金不足が見えた時に考えられる対策は、いくつかあります。
- 入金を早める工夫はできないか?
(例:未請求の工事がないか確認する、回収が遅れている売掛金はないか催促する、支払いサイトの交渉を試みる など)
→ [(仮)請求漏れ・回収遅延が命取りに?明日からできる請求業務「うっかり」防止策]へのリンク - 支払いを遅らせる交渉はできないか?
(例:仕入先や外注先に、支払いを少し待ってもらえないか相談する など ※信用関係を損なわないよう慎重に) - コストを削減できる部分はないか?
(例:不要不急の経費を抑える、現場のムダをなくす など)
→ [現場の「もったいない」発見!利益をじわじわ増やすコスト削減アイデア集]へのリンク - 短期的な資金調達を検討する
(例:銀行に相談する、ファクタリングなどの他の資金調達手段を調べる など)
→ [(仮)請求漏れ・回収遅延が命取りに?明日からできる請求業務「うっかり」防止策と【緊急対策】]へのリンク
→ [(仮)赤字工事よ、さようなら!見積もり精度を“ちょっと”上げる現実的なコツと【資金繰り防衛術】]へのリンク
このシートがあれば、「いつまでに、あといくら必要か」が明確になるので、取るべき対策も具体的に考えやすくなります。
習慣化のコツは「ゆるく、続ける」
「よし、やってみよう!」と思っても、三日坊主になってしまう…という心配もあるかもしれません。続けるコツは、「完璧を目指さず、ゆるく続ける」ことです。
- まずは3ヶ月分だけ作ってみる。
- 週に1回、あるいは月に1回、見直す時間を決める。(例:毎週月曜の朝イチ、毎月25日の給料計算のついでに、など)
- 数字が多少ズレても気にしない。 大まかな流れが掴めていればOK。
忙しい社長さんだからこそ、負担にならない範囲で、まずは「お金の流れを見るクセ」をつけることが大切です。
まとめ:「未来予想図」で、安心経営への第一歩を
会社の引き出しに眠っている資金繰り表、もったいないと思いませんか? 難しく考える必要はありません。今回ご紹介した超シンプルな把握シートなら、手書きでも、今日からでも始められます。
未来のお金の流れを「見える化」することで、漠然とした資金繰りの不安は、具体的な対策へと変わります。事前に手を打てる安心感は、社長の精神的な負担を大きく減らしてくれるはずです。
ぜひ、この「未来予想図」を手に入れて、安心できる会社経営への第一歩を踏み出してみてください。
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[現場の「もったいない」発見!利益をじわじわ増やすコスト削減アイデア集]へのリンク - 請求や回収、モレはありませんか?:
[請求漏れ・回収遅延が命取りに?明日からできる請求業務「うっかり」防止策と【緊急対策】]へのリンク
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況に対するアドバイスではありません。金融・法律・税務等に関する最終的な判断は、必ず専門家にご相談ください。