「ウチに入った新人、なかなか仕事を覚えてくれなくて…」
「ちょっと厳しく言うと、すぐヘコんじゃうんだよなぁ…」
「昔は先輩の仕事を見て盗むのが当たり前だったのに、今の若いモンは…」
建設業界の社長さん、新しく入ってきた若手職人の育成、本当に頭が痛い問題ですよね。手取り足取り教える時間もないし、かといって放置しておくと、いつまで経っても戦力にならないどころか、自信をなくして辞めてしまう…。そんな悪循環に陥っていませんか? 本当にお疲れ様です。
「見て覚えろ」「背中を見て育て」… 私たちが若い頃は、それが当たり前だったかもしれません。でも、時代は変わりました。残念ながら、その”昭和流”の育て方は、今の若い世代には通用しにくくなっています。
この記事では、「最近の若者は…」と嘆く前に知っておきたい、令和時代の新人職人を”失敗させずに”育てるための基本的な考え方と、明日から使える具体的な育成のコツをご紹介します。「教え方が分からない」「どう接すればいいか迷う」そんな社長さんの悩みを、少しでも軽くするヒントが見つかるはずです。
なぜ「見て覚えろ」が通用しなくなったのか? 背景を知ろう
まず、なぜ昔ながらの「見て覚えろ」が通用しにくくなったのか、その背景を理解しておきましょう。決して、今の若者の根性がない、という話ではありません。
- 価値観の変化: 「仕事が全て」ではなく、プライベートや自分の時間も大切にする傾向が強まっています。非効率な「見て盗む」よりも、合理的に教えてほしいと感じる若者が増えています。
- 情報へのアクセス: スマホ一つで様々な情報が手に入る時代。仕事のやり方についても、「なぜそうするのか?」という理由や根拠を知りたいという欲求が高まっています。
- 失敗へのプレッシャー: 叱られることや失敗することへの耐性が、昔に比べて低い傾向があるとも言われます。精神的な負担を感じやすく、一度の大きな失敗で心が折れてしまうことも。
- 人手不足時代の現実: 昔のように時間をかけてじっくり育てる余裕がなくなり、できるだけ早く戦力になってもらう必要性が高まっています。
このような変化を踏まえると、「教え方」そのものをアップデートしていく必要があるのです。
令和時代の新人育成、基本はこの3つ!
では、具体的にどうすれば良いのでしょうか? 難しく考える必要はありません。まずは、この3つの基本を押さえましょう。
① OJTの基本:「やってみせ、言って聞かせ、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ」
これは、山本五十六の有名な言葉ですが、まさに新人育成の本質を表しています。
- 「やってみせる」: まずは先輩や上司が、正しいやり方をゆっくり、ポイントを押さえてやって見せる。
- 「言って聞かせる」: ただ見せるだけでなく、「なぜこうするのか」「ここが大事なポイントだ」と言葉で具体的に説明する。理由が分かると、納得感が深まります。
- 「させてみる」: 説明したら、すぐに本人にやらせてみる。最初は簡単なことから、少しずつステップアップ。失敗しても大丈夫、という安心感を与えることが大切。
- 「褒める」: やってみて、少しでもできたこと、挑戦したこと自体を具体的に褒める。「よし、その調子!」「さっきより良くなったぞ!」この承認が、自信と次への意欲に繋がります。
このサイクルを、根気強く繰り返すことが、効果的なOJT(On-the-Job Training:実務を通じた訓練)の基本です。
② 「当たり前」を形にする!超簡単マニュアル作成のススメ
ベテランにとっては「当たり前」のことでも、新人にとっては初めてのことばかり。「これくらい分かるだろう」は禁物です。
- 完璧じゃなくてOK!: 立派なマニュアルを作る必要はありません。写真や簡単なイラスト、箇条書きで十分です。
- まずは「キケン」なことから: 特に安全に関わるルールや、絶対に間違えてはいけない手順だけでも、紙一枚にまとめて渡すだけでも効果があります。
- 「これさえ見れば大丈夫」という安心感: 新人にとって、「分からない時に見返せるものがある」というだけで、心理的な負担が大きく減ります。
- 新人に作ってもらうのも手: ある程度仕事を覚えた新人に、「後輩のために、〇〇作業のマニュアル作ってみてくれない?」と頼むのも、本人の復習になり、分かりやすいものができる可能性があります。
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③ 育て上手は「褒め方」「叱り方」がうまい!
感情的に怒鳴ったり、逆に甘やかしすぎたりするのはNG。効果的な褒め方・叱り方を意識しましょう。
- 【褒める時】:
- 具体的に: 「頑張ってるな」だけでなく、「〇〇の作業、丁寧でいいね!」「挨拶の声が大きくて気持ちいいぞ!」と、具体的に褒める。
- すぐに: 良い行動を見たら、タイミングを逃さずその場で褒める。
- 結果だけでなくプロセスも: たとえ結果が伴わなくても、努力や工夫した過程を認める言葉をかける。
- 【叱る時】:
- 場所を選ぶ: 人前で大声で叱責するのはNG。周りに人がいない場所に移動するなど配慮する。
- 感情的にならない: 冷静に、事実に基づいて具体的に指摘する。「なぜダメなのか」「どうすれば良かったのか」をセットで伝える。
- 人格否定は絶対にしない: 「だからお前はダメなんだ」「使えないな」といった言葉は、相手の心を深く傷つけ、信頼関係を破壊します。
- 叱った後のフォロー: 叱りっぱなしにせず、少し時間をおいて「さっきは厳しく言ったけど、期待してるからな」「分からないことがあったら、いつでも聞けよ」とフォローの言葉をかける。
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失敗は「成長のタネ」。恐れずに挑戦させる環境を
新人に失敗はつきものです。大切なのは、失敗を恐れて挑戦できなくさせるのではなく、失敗から学び、次に活かせるようにサポートすることです。
- 「失敗しても大丈夫」というメッセージ: 普段から、「最初は誰でも失敗するもんだ」「挑戦することが大事だ」というメッセージを伝えておきましょう。
- 頭ごなしに怒鳴らない: 失敗した時こそ冷静に。「どうしてこうなったと思う?」と本人に考えさせ、原因と対策を一緒に見つける姿勢が大切です。
- 再挑戦を後押しする: 「次はここを注意して、もう一回やってみよう!」と、前向きな言葉で背中を押してあげましょう。
- ただし、安全に関わる失敗は別: 人の命に関わるようなルール違反や不安全行動は、なぜそれが危険なのかを厳しく、しかし理論的に説明し、絶対に繰り返さないように指導する必要があります。
育成は一人で抱え込まない!会社全体でサポートを
新人育成は、社長や教育担当者一人の責任ではありません。
- チームで育てる意識: 現場の先輩職人全員が、「あいつはオレたちが育てるんだ」という意識を持つことが理想です。
- 情報共有: 「〇〇君、今日はここまでできるようになった」「△△の作業で少し苦戦しているみたいだ」といった情報を、先輩間で共有し、連携してサポートしましょう。
- 質問しやすい雰囲気づくり: 新人が「こんなこと聞いたら怒られるかな…」と萎縮せず、気軽に質問できるような、風通しの良い雰囲気を作ることが重要です。
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まとめ:焦らず、丁寧に。愛情が人を育てる
令和時代の新人育成は、「見て覚えろ」の時代とは違い、時間も手間も、そして根気も必要です。正直、面倒だと感じることもあるかもしれません。
しかし、新人を丁寧に育て、一人前の職人にすることは、会社の未来を創るための、何よりも大切な「投資」です。
焦らず、一つ一つのステップを丁寧に。そして、厳しさの中にも「期待しているぞ」「一緒に頑張ろう」という愛情を持って接すること。社長や先輩たちのその想いは、必ず若手に伝わります。
「見て覚えろ」から脱却し、令和の時代に合った育て方で、会社の未来を担う人財を、一緒に育てていきませんか?
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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況に対するアドバイスではありません。人材育成や労務管理に関する最終的な判断は、ご自身の責任において、必要に応じて専門家にご相談ください。